■小さな声でミシャが語った一言

 試合後、会見場に出てきたミシャは、絞り出すように最初のコメントを語った。いつもなら、どんな結果でも真っ先に手を上げてミシャに質問する私も、このときはそれ以上彼に話をさせる気にはなれなかった。結局誰も質問をせず、司会をしていた鳥栖の広報が会見を終了させた。立ち上がりながら、ミシャは小さな声でこう言った。

「質問せずにいてくれてありがとう」

 だが、こうした例はごく希と言っていい。記者たちはときに残酷と言っていいほどストレートに「敗軍の将」に詰問する。私もあからさまに監督から怒りの言葉を浴びせられたことがあったし、そうでなくても、監督たちが怒りを腹に収めて話したことが何回もあったはずだ。ときにそれは、痛みはともなっても必要な質問であることもあったはずと思いたいが、馬鹿げた質問であることも多かったに違いない。

(3)へ続く
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