2021年には、日本で新たな試みがスタートした。初の女子プロリーグ「WEリーグ」が開幕したのだ。
模索しながらのスタートで、改善すべき点は多いにある。その一端が、皇后杯で見て取れた。年末に届いた驚きのニュースから、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■大宮に勝てたかもしれない世田谷
大宮アルディージャVENTUSとスフィーダ世田谷の試合は、キックオフ直後から完全に世田谷が押し込む展開となった。そして、開始10分で世田谷のCKからオウンゴールが生まれて早くも世田谷が先制したのである。その直後にはロングボールを受けた大宮の井上綾香が倒されて大宮にPKが与えられたが、世田谷のGK石野妃芽佳がストップして、世田谷リードのまま試合が進む。
世田谷はアンカーの金子ゆいを中心とした中盤での守備が良く、大宮にパスをつながせない。そして、中盤でスクリーンをかけたことで、最終ラインも余裕を持って守れたので、大宮が縦に入れてくるパスにもしっかりと対応。そして、奪ったボールを早いタイミングで前線にフィードして攻撃の形を作っていた。
後半に入ると、世田谷の攻撃の圧力はさらに強化され、再三にわたって決定機を作り出した。だが、どうしてもシュートがゴールの枠をとらえられなかったり、GKの正面を衝いたりで、どうしても2点目を奪うことができなかったのだ。
「2点目を奪えなかったチームは罰を受ける」というのは昔からのサッカーの格言である。
実際、試合が60分をすぎる頃に、それまで運動量でも明らかに上回っていた世田谷の選手たちの足が止まり始め、交代でフレッシュな選手を入れた大宮に試合の流れが移っていった。そして、84分に左から持ち込んだ鮫島彩の入れたクロスを、村上真帆が決めて同点とし、さらに終了間際の90分には、やはり左サイドから仲田歩夢が入れたクロスに中央で上辻佑実が合わせて大宮が逆転に成功したのだ。
後半に完全にゲームを支配していた後半の立ち上がりに2点目を奪うことができてさえいれば、あるいは最後まで足が止まることがなければ、世田谷は勝利を手繰り寄せることができたはず……。そんな試合だった。