■リスクを負って打ち込む厳しいパス
最大の特徴は積極的なパスの仕掛け方だ。多少のリスクはあっても、「安全なパス」ではなく、常に相手にとって最も嫌なコースへの厳しいパスを選択するのだ。伊賀の選手たちは敵陣深くへ、あるいは守備ラインの裏へのパスを狙い続ける。
たとえば、先日の日本女子代表(なでしこジャパン)のオランダ遠征、とくに完敗を喫したアイスランド戦などを見ていると、せっかく前線の選手が裏に抜けようとしているのに、安全を優先してバックパスや横パスに逃げてしまう場面が目についた。裏を狙うパスがもっと出せなければ、攻撃に迫力は加わらない。
その点、伊賀の攻撃は非常に強度が高い。選手たちに、こうした積極的な姿勢を植え付けたのは、伊賀を指導する大嶽直人監督の手腕なのだろう。
ところが、浦和戦では伊賀の積極的なパスも効果を消されてしまった。なぜなら、浦和の強力なCBコンビ、南萌華と高橋はなが、伊賀の狙いを読み切ってことごとく跳ね返してしまったからだ。
一方、浦和の方も攻撃が機能しない。時間の経過とともに攻撃の圧力を高め、サイドからクロスを入れる場面は増えたものの、伊賀のDFもミスなく対応。また、シュートも枠に飛ばない。そして、前線に構える日本代表FWの菅澤優衣香がまったく攻撃に絡めなかったのだ。