W杯優勝キャプテン・ボビー・ムーアの苦言「莫大なカネがサッカーを支配し、選手はやりたいことができない」【ワールドカップはいつ「死にはじめた」のか】(3)の画像
カタール・ワールドカップは、民衆のための大会となるか 写真:渡辺航滋

 2022年にはワールドカップ・カタール大会が開催される。世界最大のスポーツイベントだが、すでに単なるサッカー最強国を決める大会にはとどまらなくなっている。続伸するその勢いはとどまるところを知らず、ついには自らをも飲み込もうとしている。

W杯拡大の狙いはスポンサーの獲得

 1962年、ワールドカップは大きな歴史の節目を迎える。出場国が24に拡大されたのだ。1974年にFIFA会長に就任したジョアン・アベランジェの「サッカーを真に世界のものにする」という方針に基づいての拡大だった。16チーム時代の最後には、アジアとオセアニアを合わせて1つの出場枠しかなかった。1974年大会にはオセアニアのオーストラリアが出場し、1978年大会ではイランが出場した。しかし24チームへの拡大により、1982年大会ではアジアとオセアニアを合わせて2つの枠が与えられ、1966年からはアジアに2枠、オセアニアに0.5枠となった。

 だが、大会の拡大には別の狙いもあった。「公式スポンサー」の獲得である。ピッチの周囲に掲出する看板をFIFAが初めて自らの権利とし、販売したのがこの大会だった。世界的な企業9社から1社30億円と言われる資金を集め、それまで入場料収入が大きな柱だったワールドカップの財政構造が大きく変わった。

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