さまざまな出来事が起きた2021年の日本サッカー界。Jリーグでは川崎フロンターレが圧倒的強さで2連覇を果たし、日本代表はワールドカップ最終予選で崖っぷちに立たされたもののなんとか勝利を掴むことができた。そんな中で、現場で取材した記者が目撃したピッチ内外の衝撃事件を振り返る。
■10月12日/W杯アジア最終予選 日本代表ーオーストラリア代表(埼玉スタジアム)
21年10月12日に行われたW杯最終予選オーストラリア戦は、W杯最終予選の緊張感とはまた違った重圧が埼玉スタジアムを包み込んでいた。この試合を前に、大手メディアが盛んに森保一監督の解任について報道。後任候補すら報じられるという状況だった。
引き分け以下なら日本代表のカタールW杯出場がかなり難しくなるという中で、試合前の国歌斉唱の際、森保監督は真っ赤にした目に涙を浮かべていたほどだ。指揮官はスターティングメンバーに手を加え、最終予選第3戦から選手3人を入れ替えて田中碧ら新たな血を入れた。さらに、システムも森保ジャパンの代名詞である「4-2-3-1」から「4-3-3」に変更。勝利のために動いたのだ。
そして、その田中が前半のうちに鮮やかで落ち着き払った先制ゴールを挙げる。一度は追いつかれたものの勝ち越しに成功し、“変革”での勝利を手に入れたのだった。試合終了を告げるホイッスルが鳴るとベンチにいた選手も一斉に喜び、ピッチに駆け出すほど、選手やスタッフは重圧を感じていた。森保監督は、弾けるような笑顔で選手を出迎えた。