天皇杯でも振るわなかった大学勢

 この数年、競技水準の上がってきている関東や関西の大学勢は、天皇杯全日本選手権大会でJリーグ勢を倒しジャイアントキリングをたびたび起こしてきた。

 昨シーズンの天皇杯は新型コロナウイルスの影響で変則的な形式で行われたから別だが、一昨シーズンは法政大学が東京ヴェルディガンバ大阪に完勝して準々決勝に進出。2017年度には筑波大学がYSCC横浜、ベガルタ仙台アビスパ福岡を倒してラウンド16まで進んでいた。

 だが、今シーズンの天皇杯では千葉県代表となった順天堂大学(関東大学リーグ8位)が1回戦で群馬県のtonan前橋(関東リーグ2部3位)に勝利し、2回戦でFC東京に食い下がったものの延長の末に敗れ、東京代表の駒大はJ2で残留争いをしているSC相模原に、茨城代表の流経大もやはりJ2のYSCC横浜に、それぞれ敗れてしまった。

 やはり、今シーズンの大学勢は十分な戦力が整えられなかったのだろう。

■いくつも重なった悪条件

 

 もちろん、新型コロナウイルス感染症の影響は、Jリーグ勢にも、社会人勢にもあるはずだ。J1リーグでも、感染者が出て活動を休止したクラブが複数あったし、試合が延期となったことも何度かあった。

 しかし、コロナ禍の影響は大学チームの方が圧倒的に大きい。

 まず、選手の多くが寮に寝泊まりしている大学チームでは集団感染が起きやすい。そのため、実際に集団感染が起こったケースも多いし、集団感染の発生を防ぐためには厳しい行動制限を設ける必要もあった。

 Jリーグでは、感染症対策を進めながら、観客を入れながらリーグ戦を進めることができたが、大学リーグでは多くの試合が無観客で関係者やスカウト、メディアのみに公開されるケースが多かった。もちろん、選手たちの日常生活やトレーニングにも制約が課されていたのだ。

 しかも、学生スポーツというのは、卒業生を送り出し、また新入生を迎え入れながら、毎年、新しいチームを作る作業が続くのだ。春先には無名だった選手が急成長してみたり、パッとしなかったチームが時間の経過とともに強化が進み、秋口には優勝争いにも絡んでくる。そんな姿を毎年のように見ることができる。

 ところが、新チームを立ち上げた時点で思ったようなトレーニングの機会が得られなくなってしまったのでは、チームを完成させることができない。これは、高校チームも含めて学生スポーツ全体に言えることだ。

 そして、なんとかやり繰りをしながらチームを編成して、試合を通じて強化を進めていても、集団感染が次々と発生してしまう。自チームで感染が起こらなくても、対戦相手に感染が生じたら試合は中止となってしまう。

 トレーニングで詰めてきたものを試合でトライして、うまくいかなければ修正して次の試合に臨む……。それが、リーグ戦というものなのだが、試合も予定通りに進められないのではチーム強化もままならない。

 そんな悪条件がいくつも重なったため、今シーズンは圧倒的な力を示すチームが生まれず、結果的にリーグ戦は大混戦となったのである。

(3)へ続く
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