11人で芝生の上で行われるものだけが、サッカーではない。フットサルもビーチサッカーも、大きなサッカーというファミリーの一員だ。その家族が手を携える必要性と可能性を、サッカージャーナリスト・後藤健生が語る。
フットサルの観客動員を伸ばすためには当面、2つのアプローチが考えられる。
1つは、フットサルをプレーする人たちをいかにして動員するか、である。フットサルは気軽にボールを蹴ることができるスポーツとして競技人口は多い。正式に登録していないプレーヤーも多数いるはずである。そうして人々がFリーグに入場してくれれば観客を増やすことができる。
だが、彼らにとってフットサルは「プレーするスポーツ」であっても、「観るスポーツ」ではないのだ。フットサルという競技自体に興味を抱いているはずのプレーヤーたちをいかにして動員するのか……。これが最も大切なことは間違いない。
2つ目は、サッカーのサポーターをいかにFリーグに引き付けるか、だ。
サッカー(Jリーグ)はプロ野球に次ぐ観客動員数を誇る日本でも有数の人気スポーツである。しかし、(フットサルを見たことのない)サッカー・ファンはフットサルには無関心だったり、「フットサルなんて遊びのようなもの……」といった偏見を抱いていたりするようだ。
しかし、フットサルというのは間違いなくサッカーというスポーツの一部である。単に日本サッカー協会(JFA)の傘下にあるとか、足でボールを蹴るスポーツだというだけでなく、プレッシングのかけ方とか、サイドの崩し方等々、サッカーと共通する部分は多い。だから、サッカーを見慣れた人ならフットサル観戦が初めてでもすぐに楽しむことができる。
従って、サッカーのサポーターのごく一部でもFリーグ観戦にやって来てくれれば、観客動員数拡大に大きく寄与するはずである。
そのためには、湘南ベルマーレのようにJリーグ・クラブがフットサル部門を持つことも大事だろう。
Jリーグ・クラブの中には他競技のチームを持つクラブも増えている。たとえば、湘南ベルマーレ傘下の「NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」ではフットサルのほかにも、トライアスロンやビーチバレーなど合計9つの競技を運営している。そうした総合スポーツクラブ化を目指すJクラブは今後も増えていくだろうが、そんな中でも、サッカーとの共通性の高いフットサルという競技はJクラブとの親和性も高いのではないか。
“松井大輔効果”が拡大していけば、そうしたサッカーとフットサル、JリーグとFリーグの連携強化のためのきっかけになるかもしれない。