■ロンドンでは異色だった労働者のクラブ
当時のハイバリーも、現在のエミレーツ・スタジアムも、最寄り駅はロンドン地下鉄ピカデリー線の「アーセナル」駅だが、もともと「ギレスピー・ロード」と呼ばれていた駅名を「アーセナル」に変えさせたのもチャップマン監督だった。
1886年に結成されたアーセナルは1893年にFL2部に加盟したのだが、実はロンドンのクラブとしてFLに加盟したのはアーセナルが初めてだった。サッカーというスポーツが生まれたのは、1863年にロンドンのクラブによってFAが結成された時に遡るのだが、ロンドンのクラブというのは上流階級の人々によるアマチュア・クラブだった。一方、FLは北部の労働者階級のプロ選手たちのクラブによって結成された団体だった。そんな中でアーセナルがFLに加わったのは、このクラブがロンドン郊外のウーリッジ兵器工廠の労働者階級(多くがスコットランド人)によって作られたクラブだったからなのだ。
このように、アーセナルというのはあらゆる意味でユニークなクラブであり、また古い時代から日本人にとって馴染みの深いクラブだったのである。