■9月26日/J1第30節 川崎フロンターレ 2-1 湘南ベルマーレ(等々力競技場)
電光掲示板の横に設置された大きな時計の針は、すでに45分を指し示して動かなかった。9月26日、18時55分の等々力競技場。背番号41の左足からゴール前にクロスが上げられた瞬間、時計の針だけでなく時間までも止まったかのようだった。しかし、そのボールに反応した男がいた。FW知念慶。すでに足をつっていて、時折ピッチで足を伸ばさなければ歩けないほど疲労を抱えていた。にもかかわらず、背番号20は天高く飛び上がると、クロスを頭で叩きつけた。ゴールネットが揺れると同時に、競技場はすさまじい歓声が沸き上がった。知念は足をつって、起き上がれない。ヒーローは、サポーターと仲間に笑顔をプレゼントすると、自らは苦悶の表情となって喜ぶことすらできなかった――。
チームとしては、前節同様の劇的勝利だった。アウェイゲームとなった鹿島戦で、内容で押される苦しい展開ながら最後の最後に宮城天が豪快な決勝弾を決めてみせた。この得点時間は、公式記録では90+4分。そしてこの湘南戦でも、90+4分に決勝点が決まった。どちらも苦しみながら奪ったゴールと白星だった。
今季序盤に見せつけたような圧倒的強さを、ここしばらくのピッチでは示すことができていない。だからこそ、この試合ではシステムを変更して挑んだ。代名詞となる4-3-3を封印したのである。