後藤健生の「蹴球放浪記」連載第77回「イスタンブールの奇跡と集団スリ」の巻(2)「ホテルを出る前の不思議な予感」の画像
イスタンブールでのCLファイナルのあまりにもシンプルな取材者用ADカード 写真提供/後藤健生
■【写真】観戦の苦労をしのばせる証拠のチケット

サッカーのあるところ、蹴球放浪家・後藤健生あり。たとえ危険があろうとも、サッカーのためなら乗り込んでいくのがジャーナリストだ。ただし、「どうして来てしまったのか」と反省することもある。その理由は、時には試合内容であり、時には旅の内容となる。今回は、2005年にトルコで行われたチャンピオンズリーグ(CL)決勝取材時のお話。試合内容は良かったのだけれど…。

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 イスタンブール市内からスタジアムまではかなりの山道でしたが、途中で周囲の尾根の上などを見ると、機関銃で武装した軍があちこちに展開していました。「何としても事故を起こしてはいけない」という政府の決意のようなものを感じました。

 オリンピック招致のために造られたスタジアムは陸上競技場だったうえに、記者席がメインスタンドの最上段にあったため、ピッチまでが遠くて試合がよく見えませんでした。しかも、試合開始直後にアンドレア・ピルロのFKからパオロ・マルディーニが決めると、エルナン・クレスポが2点を追加して、ミランが3点をリードして前半を終了しました。一方的な展開です。

 守備の堅いミランが3点リードしたのでは、もう勝負あり……。「なんで、こんな試合を見に来たんだろうなぁ」と反省しながら、僕はハーフタイムには明日からのイスタンブール観光のことを考えていました。

 ところが、後半が始まると54分のスティーブン・ジェラードのゴールでリヴァプールが反撃を開始。56分にウラディミール・シュミツェル、60分にシャビ・アロンソが決めて、3連続ゴールでリヴァプールが追いつきます。そして、試合は結局3対3で引き分けに終わり、PK戦でリヴァプールが逆転優勝。「イスタンブールの奇跡」と呼ばれて、サッカーの歴史に残る試合となりました。

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