後藤健生の「蹴球放浪記」連載第77回「イスタンブールの奇跡と集団スリ」の巻(1)「衝動に駆られてリヴァプール対ACミランのCL決勝取材へ」の画像
パスポートのスタンプに至るまで、空港のセキュリティー対策は万全だったのに… 写真提供/後藤健生
■【写真】昔からものすごいインフレ。トルコの旧500万リラ札。

サッカーのあるところ、蹴球放浪家・後藤健生あり。たとえ危険があろうとも、サッカーのためなら乗り込んでいくのがジャーナリストだ。ただし、「どうして来てしまったのか」と反省することもある。その理由は、時には試合内容であり、時には旅の内容となる。

 前回は「小悪人」たちを撃退した時の話でしたが、時にはどうにも抵抗できない相手もあります。

 たとえば、この「蹴球放浪記」の第10回に登場したピストル強盗。ピストルの銃口がこちらを向いていたのでは、抵抗することも逃げることもできません(追いかけることはできましたが……)。あるいは大勢に取り囲まれて押さえつけられてしまったとしたら、こちらがカンフーの達人か何かでなかったら、抵抗のしようがありません。

 そんな「集団スリ」に遭ったのは2005年5月25日のことでした。場所はトルコの首都イスタンブール、アタテュルク・オリンピヤト・スタドゥ(オリンピック・スタジアム)。そう、リヴァプール対ACミランの、“あの”UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦の試合後のことです。

 僕は、CLの決勝はあまり見に行ったことがありません。大金を使って見に行っても、たった1試合しか見られないからです(ついでに他の試合も見ようと思っても、ほとんどの国のリーグ戦はもう終了している)。

 この年も別に見に行く気はなかったのですが、準決勝が終わって決勝進出チームが決まった時に「どうしても現地に行ってみたい」という気になったのです。何故そういう気持ちになったのかは、今でも分かりません。とにかく、僕は衝動に駆られて早速UEFAに取材申請を出しました。

PHOTO GALLERY ■【写真】昔からものすごいインフレ。トルコの旧500万リラ札。
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