■コロナ禍でも「あなたは、けっしてひとりではない」ように

 2020年3月、英国のシンガーソングライターであるマルクス・マムフォードは、この曲のカバーをリリース、その収益を新型コロナウイルスと戦う医療関係者やエッセンシャルワーカーへの支援にあてると発表した。実はパンデミックが始まる前に録音が行われていたのだが、いまこそこの歌がもつメッセージが必要と感じたのだという。

 2017年には、この歌に関するドキュメンタリー映画が制作され、日本でも翌年に公開された。『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』がもつ力は、いまでもまったく衰えていないのだ。

「この歌には、人生で最も重要なメッセージが込められている」と語ったのは、誰だっただろうか。どこかで読んだ記憶があり、ずいぶん調べたのだが、調べきれなかった。しかしこの言葉は見事に『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』の本質を言い当てている。

 苦しんでいる人、困難に直面している人に必要なメッセージ、それは「きみは、あなたはけっしてひとりではないんだよ」というものに違いない。人間は、互いに助け合い、励まし合って生きていく生き物である。その助け合い、励まし合いが、ときには、食べ物よりはるかに大きな活力になる。『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』は、私たちの心に、ストレートにそのメッセージを伝えてくれる。

「きみたちには、いつも僕たちがついている」

「あなたは、けっしてひとりではない」

 そう、昨年、新型コロナウイルス蔓延の初期、最初の緊急事態宣言が出て誰もが家に引きこもり、社会と切り離され、不安に押しつぶれそうになったとき、何より力づけてくれたのが、遠くの友人から送られてきた1枚の手作りマスクだったように。

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