■DFの疲れを見逃さなかったアンチェロッティ
スピード自慢のビニシウスに突破を許していなかったシュクリニアルだが、ついに72分には振り切られる場面を露呈する。敵将アンチェロッティは、その疲労の表れを見逃さなかったに違いない。その8分後、エドゥアルド・カマビンガを送り込んだ。
勝ち点1を分け合うかに思えた89分、互いの交代策が描く明暗が、強くコントラストを描いた。ボールを持ったカマビンガは、ボールをはたくとボックス内へと走り出す。迫りくるカマビンガに、シュクリニアルは一瞬考えたのちに詰め寄ることを決断した。世界が注目する18歳をより警戒したことは、非難されるべきではない。ただし、そのために少しずつマークがずれたことも事実だ。
走り込んだカマビンガは、その瞬間を待っていた。寄せてきたシュクリニアルの鼻先で、1タッチで中央へパス。ロドリゴが左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。
交代枠を使い切ったインテルに対して、R・マドリードが切ったカードは2枚だけだった。状況が苦しい中でも選手を信頼し、最初に交代カードを切ったのは65分のことだった。そこで送り出された選手こそ、決勝点を決めたロドリゴだった。
試合の流れと、勝負どころを見極めての采配。この試合では、かつてミランを率いて多くの栄光を手にしたアンチェロッティに軍配が上がった。サン・シーロへの「凱旋」を果たしたと言っていい。