■全員で戦う意識…彷彿させる2017年の場面
試合後の会見で、鈴木は「(CKの場面では)自分から(前線へ)上がっていいかとベンチに確認したら、監督も『上がれ』と言っていた。いつもは一番後ろからゴールシーンを見ているので、今回は目の前で得点を決めることができて、いつもとはちがった喜びがあった」と、チームの一員として得点シーンに携われたことに特別な思いを感じたのか、表情を緩ませた。同点ゴールを決めた槙野も、「2失点目、3失点目の時に選手たちの(表情が)沈んでいるように見えたが、ユンカーが(2点目を)決めた時に、『やってやるぞ』『まだ諦めない』という顔が見受けられたので、その表情を受け取って、『俺がやってやる』という気持ちでピッチに入りました」と話す。チームがひとつになる雰囲気は最高潮だった。
似たような場面が脳裏をよぎった。2017年のACL準々決勝。浦和と川崎は、準決勝進出をかけて対戦した。
このACLでの戦いもホームとアウェーでの2試合が行われたが、第1戦は川崎のホームで行われた。この試合で3-1と川崎にリードされると、さらに埼玉スタジアムで行われた第2戦でも先制され、浦和は窮地に立たされていた。しかし、後半の猛攻から土壇場でスコアをひっくり返し、大逆転でベスト4進出を果たした。勢いに乗った浦和はその後もACLを勝ち進み、この年のアジアの頂点に立ったのだった。あの時の浦和は、チームが結束していて、底知れぬ神通力のようなものを感じた。ベンチのメンバーも含めて、最後まで諦めずに全員が必死になって戦う。まるであの時と同じ―選手の目つきや表情、チーム全体の雰囲気は、2017年のACLでの川崎戦を思い出させるものだった。
チーム一丸となって、ベスト4進出を決めた。好調の浦和ではあるが、タイトルまでの道のりは半ばであるため、もちろん油断は禁物である。しかし、今回、川崎を破ったことで、自信を深めたことは間違いない。新しい浦和のスタイルは確実に根付き始めている。王者を退けた勢いをそのままに、リーグ戦もカップ戦もさらなる躍進を見せてほしい。
準決勝の第1戦は10月6日に行われる。浦和は3年ぶりのタイトル獲得に向けて、さらなる進化を遂げられるか。
■試合結果
川崎フロンターレ 3―3 浦和レッズ
■得点
8分 江坂任(浦和レッズ)
40分 レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)
77分 山村和也(川崎フロンターレ)
83分 ジョアン・シミッチ(川崎フロンターレ)
87分 キャスパー・ユンカー(浦和レッズ)
94分 槙野智章(浦和レッズ)