「ポステコグルーからマスカットへ」成功した横浜FM「攻撃サッカーの継承」「川崎フロンターレと横浜F・マリノス」【J1死闘】(2)の画像
8月21日、横浜F・マリノスーベガルタ仙台戦の試合後、勝利を喜ぶ横浜FMイレブン 撮影:中地拓也

破壊的な攻撃力を武器に猛追する横浜F・マリノスに、手負いながらも首位を譲らない川崎フロンターレ―。Jリーグの首位攻防がデッドヒートの様相を見せてきた。ここまで首位をひた走ってきた川崎の失速の原因は何か、その攻撃力に復活の見込みはあるのか。勢いのついてきた横浜FMの強さは、ハイレベルなリーグ上位チームを相手にどこまで通用するのか。2021年J1リーグはいよいよ佳境に突入する。

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■横浜FMが重視するゴールの形

 横浜FMがSBからのクロスを重視していることは、試合前のウォームアップを見ているとすぐに理解することができる。

 一般に、試合前のウォームアップの後半ではシュート練習が行われることが多い。多くのチームでは、ゴール前でコーチが出したマイナス気味のボールを思い切って強いシュートをするような形式が多いのだが、このようなシュート練習が実戦的でないことは一目瞭然だ。ただキックをするだけ。ただのウォームアップでしかない。

 これまでにも何度か取り上げてきたが、川崎のシュート練習はより実戦的だ。かなりスピードの速いパスを交換した後、ゴールの隅をしっかりと狙ったシュートを放つ練習をしている。

 横浜FMの場合、ゴール前でシュート練習をしているのはFWの選手だけだ。CBは、コーチ相手にクリアのヘディング練習をしてアップしており、ボランチの選手とSBはクロスの練習だ。ボランチがサイドにボールを送って、SBの選手はペナルティーエリアのラインより手前からアーリークロスを入れ、ゴール前にいるFWがそれをワンタッチで決める……。ウォームアップの時から、そうした明確な狙いを持った練習がなされているのだ。

 つまり、横浜FMの狙いはGKとDFの間のスペースを狙ったアーリークロスに対してFWや2列目の複数の選手が飛び込んでいくという形なのだ。

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