破壊的な攻撃力を武器に猛追する横浜F・マリノスに、手負いながらも首位を譲らない川崎フロンターレ―。Jリーグの首位攻防がデッドヒートの様相を見せてきた。ここまで首位をひた走ってきた川崎の失速の原因は何か、その攻撃力に復活の見込みはあるのか。勢いのついてきた横浜FMの強さは、ハイレベルなリーグ上位チームを相手にどこまで通用するのか。2021年J1リーグはいよいよ佳境に突入する。
■横浜FMが重視するゴールの形
横浜FMがSBからのクロスを重視していることは、試合前のウォームアップを見ているとすぐに理解することができる。
一般に、試合前のウォームアップの後半ではシュート練習が行われることが多い。多くのチームでは、ゴール前でコーチが出したマイナス気味のボールを思い切って強いシュートをするような形式が多いのだが、このようなシュート練習が実戦的でないことは一目瞭然だ。ただキックをするだけ。ただのウォームアップでしかない。
これまでにも何度か取り上げてきたが、川崎のシュート練習はより実戦的だ。かなりスピードの速いパスを交換した後、ゴールの隅をしっかりと狙ったシュートを放つ練習をしている。
横浜FMの場合、ゴール前でシュート練習をしているのはFWの選手だけだ。CBは、コーチ相手にクリアのヘディング練習をしてアップしており、ボランチの選手とSBはクロスの練習だ。ボランチがサイドにボールを送って、SBの選手はペナルティーエリアのラインより手前からアーリークロスを入れ、ゴール前にいるFWがそれをワンタッチで決める……。ウォームアップの時から、そうした明確な狙いを持った練習がなされているのだ。
つまり、横浜FMの狙いはGKとDFの間のスペースを狙ったアーリークロスに対してFWや2列目の複数の選手が飛び込んでいくという形なのだ。