■足し算ではなく掛け算に?

 近年は出場機会に恵まれなかったが、欧州での経験が伊達ではないことを武藤は証明した。今度はここに、日本代表の前線の柱である大迫勇也が加わる。バルセロナでともにプレーしたボージャンが、イニエスタの記憶と感覚をさらに鮮やかに蘇らせる可能性もある。

 武藤、大迫、ボージャンは、センターFWやセカンドストライカーと、本来はピッチ中央を主戦場とする選手たちだ。サイドでのプレーもできないわけではないが、三浦監督はこの新戦力をいかにチームに組み込み、共存させ、あるいはチームを変えていくのか。

 この鹿島戦の後、三浦監督は試合中に複数回システム変更を施していたことを明かし、選手たちの戦術理解度の高さを称賛していた。この日も普段の4-4-2ではなく3バックを使用するなど、新たな戦い方を導入する素地は、すでにある。

 サッカーは単純に戦力を足し算できるものではないが、1人の選手の存在で大きくプレーが変化する事実は示された。うまく戦力を結び付ければ、それは足し算ではなく掛け算となって、チームの力が伸びていく可能性がある。

 通常はシーズン前の入念な準備で新たなチームができていくものだが、今年の神戸はまったく違う進化論を提示してくれるかもしれない。

 

  1. 1
  2. 2