■秀逸なオフ・ザ・ボールの動き

 涼しく空気が乾燥しているポーランドから、高温多湿の国での初挑戦とは思えないほどの動きを見せた。身長184センチ・体重86キロという数字に惑わされそうだが、動きは極めて俊敏だ。中央にデンと構えるのではなく、左右に流れながらボールを呼び込む。足元でのワンタッチパスなど、技術の高さも感じさせる。

 71分には、秀逸な動きから惜しいシュートを放った。左サイドからの相馬のクロスは、ニアに飛び込んだ柿谷曜一朗には合わなかった。だが、その間もファーサイドのシュヴィルツォクは抜け目ない動きで湘南DF杉岡大暉のマークをはがす努力を怠らなかった。角度のない位置からのシュートはポストを叩いたが、周到な準備なくしては打てない一撃だった。

 湘南に期限付き移籍で戻ってきたばかりの杉岡は、シュヴィルツォクをかなり警戒していた。セットプレーでの守備でもマークについた。チームとしても、かなり危険視していたはずだ。決勝点の場面では、そのFWが目の前でCKに触れそうだと思った舘の体が反応し、完璧に捕まえておくべきキム・ミンテを一瞬離してゴールを許してしまったのだ。

 先制した後も、シュヴィルツォクはどん欲だった。終了間際、89分の場面だ。弧を描く動きで湘南DFの死角に入り、吉田豊のロングボールを引き出した。完全にフリーで受けてGKもかわしながら、バウンドが合わずにシュートは枠を外れたが、その動きには「本物」の予感が漂う。

 僥倖だけではない。名古屋に7試合の勝利をもたらしたゴールの場面には、今後の浮上の可能性も凝縮されていたのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3