■日本選手がゲーム体力を身に着けるために
この現在地から抜け出すための方法はあるのだろうか?
もちろん、望ましいのは日本の選手のレベルを上げて、“ゲーム体力”を強化することだ。単なるフィジカル的な体力ではない。テクニックのレベルを上げて、速い展開の中でも正確にパスを回せるようになれば(あのスペイン代表のように)、無駄な体力を使うことはなくなる。
もちろんフィジカル的な強化も必要だし、試合の中でフルパワーで戦う時間と力を温存する時間を見極める判断力も必要だろう。
たとえば、疲労が蓄積した中でメキシコはキックオフから集中力を高めて試合に入って、早い時間に先制すると(1対0の段階から)、以後は引いて守って省エネサッカーに切り替えた。そして、セットプレーで絶対的優位に立って、その後、楽に試合を進めることができた。一方、「入り」で失敗して2点のリードを奪われた日本は、「極度に疲労が溜まった状態で2点のビハインドを追う」という、ほぼ不可能なタスクを課されたのだ。
日本のサッカーが、そうした強度を身に着けるためには何が必要なのか?
もちろん、科学的なトレーニングも必要になる。だが、“ゲーム体力”というのは、そうした強度の高い試合を数多く経験することでしか解決できないのではないか。
海外組の選手がそうした「強さ」を身に着けているのは、クラブでの戦いで強度の高い試合を日常的に経験しているからだ。
技術面や戦術面だけなら、J1リーグはヨーロッパの中堅国のリーグ戦と比べてほとんど遜色ないレベルにあると思われる。もちろん、プレミアリーグやラリーガ、ブンデスリーガなどははるかに高いレベルにあるが、たとえばベルギーのジュピラーリーグの試合がそれほどレベルが高いとは思えない。
だが、ジュピラーリーグは将来トップクラブを目指す野心に燃えた選手たちがバトルを繰り広げる場であり、その分、プレー強度やフィジカル面ではJ1リーグよりはるかに強度が高い。
そうした、リーグ戦で常に強度の高い試合を経験することによって、日本選手も強度を身に着けていくのだ。
東京オリンピックの試合を通じても、トップリーグでレギュラーとして戦っている(いた)吉田や酒井、冨安健洋、遠藤といった選手の強さは、改めて痛感させられた。