■パナスタ吹田はファンからの寄付が6億円
「パナソニックスタジアム吹田」についても、現在その所有者になっている吹田市に対し、私は大きな憤りを感じている。
このスタジアムは、後藤さんが説明したとおり、日本万博記念機構から土地を借り、民間から寄付を募って建設されたものである。建設費総額は約141億円。寄付は、法人から99億5000万円、個人から6億2000万円の計105億7000万円。これにスポーツくじや国土交通省、環境省からの助成金を加えて建設費を調達した。個人から6億円を超す寄付が集まったのは驚くべきことであり、私は大阪のサッカーファンを心から尊敬する。だが、法人からの寄付の60パーセントはこのスタジアムを使う予定のガンバ大阪を保有するパナソニックからのもので、残りの大きな部分もパナソニック関連会社からのものだった。
2015年秋にスタジアムが完成すると、任意団体であった「スタジアム建設募金団体」はこれを吹田市に寄贈した。吹田市は何もせずに141億円もの財産を手にしたのである。
私は、このスタジアムは、当然、「パナソニックスタジアム」と呼ばれるべきものと思っていた。建設費の半額以上を負担したのが、この会社や関連企業だったからだ。日本では、数百億円をかけて公共事業でスタジアムを建設した挙げ句、年間わずか数千万円から数億円の維持管理費を捻出するために「命名権」を売るという、まったく馬鹿げたことが平気で行われている。しかし「命名権」とは、本来、スタジアム建設時の大きな資金負担に対して与えられるべきものだ。
東京の「味の素スタジアム」は307億円をかけて東京都が建設したが、できた瞬間に「お荷物」扱いされ(当時の石原慎太郎都知事が公然とそう話した)、建設から2年目の2003年に命名権を売ってしまった。
さて、スタジアムを受け取った吹田市は「市立吹田サッカースタジアム」と正式名称を決め、「命名権は売らない」とうそぶいた。ただで141億円もの財産を手に入れたのだから、多少の維持管理費を負担してもらうために「名」を取られてしまう必要などないという意識だったのだろうか。ようやく2017年になって命名権を募集し、2018年から5年間10億8000万円という契約で「パナソニックスタジアム吹田」となった。このあたり、吹田市とパナソニックは、江戸時代の「お上」と「富商」の関係を思い起こさせる。