■ベッケンバウアーの正直な言葉

 埼玉県の例、吹田市の例で、スタジアム建設にとって地方自治体がいかに「サッカースタジアムの敵」であるか(そうでない自治体もたくさんあるが……)が理解してもらえるに違いない。自治体の力を借りずにサッカー界(スポーツ界)で自主的にスタジアム建設計画を進めなければ、本当にサッカーで使いやすく、ファンが目いっぱいサッカーを楽しむことのできるスタジアムはつくることができないのだ。

 ここでようやく「本論」にはいる。「スタジアムの賞味期限」の話である。しかもその賞味期限は「約30年間」と、私は思っている。

 私が最初に衝撃を受けたのは、フランツ・ベッケンバウアーの言葉だった。1990年代の終わり、ドイツが2006年ワールドカップの開催招致を発表したころのことである。当時、ベッケンバウアーはドイツの招致委員会会長を務めていた。

「1974年のワールドカップのために建設したスタジアムが時代遅れになってしまった。それを一新するために再びワールドカップを開催したい」

 彼は実に正直にそう語ったのである。

※第3回につづく
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