目を閉じれば、面白い試合を追いかけて、海外を放浪した日々が走馬灯のようによみがえる。いつになったら、再びあのようにバシバシと海外遠征できる環境が帰ってくるのか。不要不急のようではあるが、それは仕事であり、それがない人生なんて……。そういえば、空港のバゲージクレームでは、荷物が無事に回ってくるかとはらはらしながらターンテーブルで待ったものだった――。
■「マラドーナ/アウェーで敗れて/引退撤回」
アメリカ・ワールドカップ出場権を懸けたアジア最終予選。6チーム総当たりのリーグ戦形式で行われた大会で日本は4試合終了時点で首位に立っていました。最終イラク戦に勝てば初のワールドカップ出場が決まります。そして、イラク戦も終盤まで2対1でリードしていました。しかし、アディショナルタイムに入ったところでイラクがショートコーナーからクロスを上げてきました。このボールをジャファル・オムランがヘディングで決めて試合は2対2の引き分けに終わり、日本の予選突破の夢は一瞬にして潰えたのでした。
呆然とした一夜を過ごした僕は、翌朝は気持ちをすっかり切り替えていました。カタールのドーハからオーストラリアのシドニーに回って、オーストラリア対アルゼンチンの大陸間プレーオフを見に行くつもりだったのです。
この年の8月、僕は南米予選を観戦に現地まで行ってきました。アスンシオンでパラグアイ対アルゼンチン、モンテビデオでウルグアイ対ブラジル、ブエノスアイレスでアルゼンチン対ペルーと3試合を見てきました。アルゼンチンはアウェーのパラグアイ戦には3対1で勝ったのですが、次のコロンビアとのアウェー戦に敗れ、ペルーとのホームゲームもスコアレスドローに終わりました。
僕はペルー戦を見てから帰国したのですが、アルゼンチンはその次のコロンビアとのホームゲームで0対5という大敗を喫します。この試合を伝えたアルゼンチンのスポーツ誌『エルグラフィコ』の表紙は黒地に白抜きで「VERGUENZA」という大きな文字が入ったものでした。スペイン語で「恥」という意味です。