■なぜかスペイン人と呼ばれて
ここにやって来たのは、アルゼンチン対スペインという好カードがあったからです。スペインは4年前のバルセロナ・オリンピックでは金メダルを獲得したチーム。アトランタ大会ではオーバーエイジは使っていませんでしたが、ラウールやイバン・デラペーニャがいました。
試合は後半にアルゼンチンが4ゴールを奪って4対0で大勝。アルゼンチンはそのまま決勝に進出しましたが、ナイジェリアが3対2で勝って金メダルを獲得。3位決定戦はブラジルがポルトガルを5対0で破っています。つまり、日本はグループリーグで優勝と3位のチームと同居していたのです。
さて、バーミンガムのリージョン・フィールドを出て、僕は空港そばのホテルまで移動しました。クルマ社会で公共交通機関が発達していないアメリカの街。タクシーの数も不足するので、一般の人たちが許可を得てお客さんを乗せているのです(ボランティアではありません。有料です)。そんな許可の目印を着けたクルマがスタジアム前に並んでいたので、そのうちの1台に乗せてもらったのです。
オバサンが運転して、その母親のような女性も乗っていました。そして、世間話をしながらホテルのそばまでやって来ると、彼女たちは「あまり気を落とさないでね」と慰めのような言葉をしきりに口にするのです。「はい、はい」と受け答えをしてたのですが、やはり気になるので「なんで、そんなに僕を慰めるんですか?」と尋ねたら、こう言われました。
「だって、あなたたちスペイン人でしょ?」
「?」
なぜスペイン人に見えたのか、僕にとっては永遠の謎です。同行していた、当時新進気鋭のフットボール・アナリストのT村S一氏は、「フランス人」と言われなかったのが不満のようでしたが……。