■選手とスタッフを離れて見ていた指揮官
その後も攻め続けた横浜F・マリノスが放ったシュートは前半だけで7本、後半には9本を数えた。福岡が90分間で放ったシュート数に前半だけで達する猛攻ぶりだった。
アンジェ・ポステコグルー前監督が掲げた“アタッキングフットボール”をこの試合でも体現し、結果の面でも“ボス”退任後のリーグ戦で、福岡戦も含めた4試合すべてに白星を飾ることに成功。シーズン途中での監督退任という激震を見事に乗り切っている。
この試合に関していえば、松永英機暫定監督が試合後、「中断前のラストゲームで“この試合をモノにしよう”と臨みました」と福岡戦への心理状況を明らかにしたが、それに選手が応えてみせたことになる。
一方で、ピッチに向かって指示を出していたのは、実は、ジョン・ハッチンソンヘッドコーチだ。常にピッチのギリギリまで足を進め、選手に対して細かく指示。ベンチに座ってメモを取りながら戦況を見つめていた松永暫定監督とは対照的で、指揮官がヘッドコーチより前に出たのは数えるほどだった。
2人の関係性をより強く物語った場面が2つある。1つは、飲水タイムだ。ベンチに選手が集まる飲水タイムでは、通常、指揮官から選手に戦術や修正といった指示が出される。この試合でもそれが見られたが、選手に対して身振り手振りを使って指示を出していたのはヘッドコーチだった。その間、松永監督は選手とスタッフの集まりからやや離れてその様子を見守っていた。