■フィジカルは「ドイツでは普通以下」
伊藤自身は自らを冷静に客観視する。フィジカルについては「ドイツでは普通以下だと思っている」と自己分析し、「正直、自信とかは全部捨てていこうと思っています。何も考えずにいくというか、失うものはないので、毎日が挑戦、チャレンジだと思う」と語る。
シュトゥットガルトからは、「セカンドチームからのスタートになる」と言われている。これについても「とにかくいかなきゃ始まらないので」と、前向きに受け止めている。
「練習から自分の立ち位置を確立していかないといけない。そのなかで何が劣っているのかとか、強みになるもの何なのかを、判断してやっていければと思う」
シュトゥットガルトには遠藤航がいる。すでに連絡を取ったと言い、「サッカーも私生活も頼りにしていきたいです」と笑顔を浮かべた。
ブンデスリーガでデュエルマスターに君臨する遠藤は、伊藤にとって最高のロールモデルになる。
ベルギーのシントトロイデンから当時2部のシュトゥットガルトへ移籍した遠藤は、加入当初から試合に絡んだわけではない。不遇の時間を過ごしながら準備を怠らず、巡ってきたチャンスを生かして定位置をつかんだ。20年シーズン終了後、専門誌『キッカー』が選ぶベスト11にも選出された。いまやシュトゥットガルトの大黒柱となった遠藤の姿に、伊藤はセカンドチームからスタートする自らを重ね合わせることができるだろう。
シュトゥットガルトのトップチームに昇格し、ポジションを奪取すれば、日本代表入りも視野に入ってくる。ブンデスリーガで強度の高いディフェンスを身に付ければ、森保一監督のリストに加わるに違いない。
センターバックもボランチも候補者は多い。海外組を中心に、激しい競争が繰り広げられている。そのなかでも、188センチのサイズを持つレフティーという個性は希少だ。シュトゥットガルトで遠藤とともにレギュラーとなれば、ふたりのコンビネーションがそのまま日本代表の強みにもなる。ボランチでもセンターバックでも、日本代表を狙えるポテンシャルがある。
「ブンデスリーガのレベルが高いことは分かっている。もう一個高いところへ行くために、結果を残すことだけを考えていきます」
伊藤の言う「もう一個高い」ところとは──彼自身のこれからの足跡が、目ざす舞台を明らかにしていくはずだ。