■最後のチャンピオンシップでは鹿島が大逆転優勝

 日本でも、「アウェーゴール・ルール」は一般化され、Jリーグルヴァンカップ(ナビスコカップ)、入れ替え戦やプレーオフ、そしてチャンピオンシップなどで使われてきた。2016年のJリーグ・チャンピオンシップ決勝、浦和レッズ鹿島アントラーズは、アウェーゴールで決着がついた対戦だった。

 カシマスタジアムでの第1戦を阿部勇樹のPKで1-0と先行した浦和は、第2戦でも前半7分に興梠慎三の芸術的なボレーシュートで先制、圧倒的な優位に立ったように見えた。しかし最初から2点を入れての勝利が必要だった鹿島はあわてなかった。2戦の総ゴール数だけでなくアウェーゴール数でも同じだった場合(埼スタで鹿島が1-0の勝利をつかんだ場合)には、リーグの2ステージの通算勝ち点で上位のチームがチャンピオンになることになっていたからだ。通算勝ち点は浦和74、鹿島59。浦和の先制点は、鹿島には何の意味もないものだったのだ。

 前半40分に金崎夢生のゴールで1-1とした鹿島は、後半34分、抜け出した金崎が浦和DF槙野智章に倒されてPK。これを金崎自身が決めて2-1と逆転、2戦合計を3-3としただけでなく「アウェーゴール」で上回って優位に立ったのだ。そしてそのまま逃げ切り、Jリーグで8回目の優勝を飾った。

 欧州発祥で世界に広まった「アウェーゴール・ルール」だが、その運用には微妙な違いがある。2戦を終わって総ゴール数でもアウェーゴールでも差がつかない場合には延長戦にはいるが、その延長戦で記録された得点が「アウェーゴール」になるかならないかで、見解が分かれるのだ。ワールドカップ予選やUEFAのクラブ大会では、たとえば延長戦のスコアが1-1の場合、第2戦のアウェーチームの勝利となる。ワールドカップ予選の規約には、「延長戦は第2戦の不可分な一部であるから」と、その理由も明記されている。

 しかしAFCチャンピオンズリーグなどアジアサッカー連盟(AFC)の大会では、延長戦での得点には「アウェーゴール」の計算は行われず、延長戦で1-1の場合、PK戦となる。その理由は、「第2戦ホームのチームには、アウェーで延長戦をする可能性がないから」とされている。Jリーグのルヴァンカップも同様である。

第3回につづく
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