大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第64回「同点でも負け?――アウェーゴール・ルールの終了について」(1) 2021年の「バイエルン対PSG」が最後に?の画像
ホームとアウェーはサッカー文化の一部だが…… 撮影/原壮史

で、勝者はどっちだ。試合が終わっても勝ち負けがわからない! スコア上はイーブンになっても、複雑な計算方式で勝者と敗者が生まれるのがアウェーゴール決着だ。試合前には理解していたつもりでも、試合後、まわりの顔色をそっと窺ったりして。そのアウェーゴール・ルールが終了になりそうだ。それで、サッカーは面白くなるのかつまらなくなるのか――。

■サッカー史に残るバイエルンの敗退劇

 ことしのUEFAチャンピオンズリーグの準々決勝で、前年チャンピオンのバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)がフランスのパリ・サンジェルマンを相手に敗退をしたのは、大きなショックだった。だがそれ以上に、この対戦はサッカー史に残るものになるかもしれない。欧州のクラブカップ戦で、「アウェーゴール」で勝負がついた最後のカードになりそうだからだ。

 バイエルンは4月7日にホームのアリアンツ・アレーナで行われた初戦を2-3で落とし、窮地に陥った。4月13日にパリのパルクデプランスで行われた第2戦は、前半40分に1点を奪ったものの2点目は遠く、1-0で終了。2試合合計得点は3-3となったが、「アウェーゴール・ルール」で連覇への夢を断たれた。

 アウェーゴール・ルールとは、ホームアンドアウェーの2戦制の戦いにおいて2試合通算得点が同点になったとき、アウェーでのゴール数が多いほうを勝利とする、「勝敗決定方法」のひとつである。「アウェーゴールを倍にして計算する」という説明も使われるため、「アウェーゴール2倍ルール」という呼称もあったが、倍にしなくてもアウェーゴールの多寡で簡単に比べられるため、今日では「アウェーゴール・ルール」という表現が一般的だ。

 ではなぜ、バイエルンとパリ・サンジェルマンの「アウェーゴール決着」が歴史的なのか。欧州サッカー連盟(UEFA)は、2019年からの検討の結果、この方式を来季以後のクラブ大会で廃止することを決めたからだ。英国の「タイムズ」紙が5月29日に報じたところによると、UEFAの大会委員会で決定され、理事会の承認を待つだけという。これによって、UEFAは自ら考案し、1965年から56年間使用してきたシステムに終止符を打つことになる。

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