■「黄金郷」を訪れた

 1週間の時間があるので、僕はその間にキルギスを見物してこようと思ったのです。

 カザフスタンの首都アルマトイにある山小屋風のキルギス大使館でビザをもらって(当時はまだ東京にキルギス大使館はありませんでした)、運転手付きの車を50米ドルでチャーターしてキルギスの首都ビシュケクに向かいました。ビシュケク-アルマトイ間は陸路の移動が一般的です。キルギス人が海外旅行をする時には、ビシュケクからではなく、便数の多いアルマトイの空港まで移動するのが普通のようです。

 ビシュケクでは、ソ連時代の国営旅行社「インツーリスト」が経営していた“官営”の大きなホテルを予約してあったのですが、そこに行ったら「満室だぞな」とのことで(おそらく政府系の会議か何かあったのでしょう)「エルドラド(黄金郷)」という名前の民営のホテルに案内されました。

 レストランではキルギス人とロシア人混成のバンドが登場してビートルズなど西側のポップスを演奏しており、小金持ちのキルギス人たちが食事やダンスを楽しんでいます。サウナやカラオケもありました。彼らの服装は1970年代風のスノッブなもの。どこか、時空間を超越したような不思議な感覚に陥りました。おそらく、客の多くはソ連崩壊後、西欧化=商業化を始めたばかりのキルギスでビジネスに成功したような人々だったのでしょう。

 そのレストランで、僕は中央アジア独特の麺「ラフマン」をすすってから、20ccのウォトカを注文してしこたま酔いました。ここでは、ウォトカは「cc」単位で注文すると、フラスコのようなものに入って出てくるのです。

※第2回につづく

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