■ハンドリングとは、意図的に手で扱うこと

 そして加えられた、反則になる場合の文言がこうである。

「手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる。手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は不自然に体を大きくしたとみなされる。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある」(原文は英語、日本語訳は日本サッカー協会審判委員会)

「ハンドの反則」というが、正式な名称は「ハンドリング(Handling the ball)」であり、「手(ハンド)」ではなく、「ハンドルhandle」という動詞が言葉の元となっている。その意味を辞書で調べてみれば、「手で触れる、手でさわる」「処理する、扱う」「用いる、使う、扱う」「統御する、あやつる、操縦する」「扱う、論じる」「扱う、処遇する」「取り扱う、売買する、商う」そして特殊な狩猟用語として「殺す」などの日本語訳が当てられている。(『小学館ランダムハウス英和辞典』より)

 すなわち、ハンドリングとは、受動的にではなく、能動的に何かを手で扱うこと、サッカーでいえば「意図的にボールを手で扱うこと」となる。「ハンドリング」についてのサッカーのルールの精神は、攻撃時であっても守備時であってもボールを手で扱って有利にしようという行為を禁止するもので、偶発的に、あるいはよけようもなくボールが手や腕に当たったものまで罰しようというものではない。

 ことしのルール改正に関するIFABの意図は、そうした「ハンドの反則の原則」に戻ろうという強いメッセージと理解された。「体を不自然に大きくする」の判断が主審だけに任されることの懸念はあったが、方向性としては非常に正しく、歓迎されるべきものと思われた。

※第2回につづく

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