■PA内で手に当たったらすべてハンド?

 その「つまらないサッカー」を、最近よく思い起こす。欧州のサッカーなどで、クロスを防ごうとする選手、シュートのブロックに行く選手の多くが手を後ろに組んでいるシーンを見るたびにである。こうした「ハンド対策」は昔からあったが、最近ではそう指導されているのか、かなり一般的になり、日本でも広まりつつある。

 それは、ここ数年、「手に当たったらすべてハンド」という判定が当たり前になってしまったからだ。とくにビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)が導入されている試合では、その傾向が強い。ピッチ上のどこでもというわけではない。ペナルティーエリア内で守備側選手の手に当たったら、極端に言えば、どんな状況でもハンドになるようになってしまっている。

 ことし3月、サッカーのルールを決める国際サッカー評議会(IFAB=「アイファブ」と読むのが国際的であるらしい)の第135回年次総会で「競技規則12ファウルと不正行為」の改正が決議されたとき、IFABの意図は、「何でもかんでも手に当たったらハンドの反則にする昨今の傾向を正しい方向に是正する」ということだったに違いない。

 そして、2020/21年版までのルールにあった「手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした」「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある(競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く)」などのハンドの反則になる具体的で形式的な記述を、大幅に削除した。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4