■チェルシーに続く新しい潮流
ただし、乗り越えられなかったのが、チャンピオンズリーグ準決勝の壁だった。アブラモビッチによる買収直後のシーズンに準決勝まで勝ち進んだが、あと一歩進んで決勝にたどり着いたのは4年後のことだった。しかしその待望の舞台では、マンチェスター・ユナイテッドにPK戦の末に敗れている。悲願のビッグイヤー獲得までには、さらに4年の月日を必要とした。もちろん、信じられないような大金を費やしながら、である。
チェルシーのCL初制覇の3年前、ヨーロッパのフットボール界に新たな潮流が生まれていた。アラブ首長国連邦(UAE)の投資グループによる、マンチェスター・シティの買収。アブラモビッチも石油で財を成した富豪だったが、今度は中東の潤沢なオイルマネーがイングランドに流れ込んできたのだ。
前年の2007年にタイ元首相のタクシン・チナワットによる買収で、一気に補強費が増えていたシティだが、1年後に続いた買収でその金額はさらに倍増。レアル・マドリードからのブラジル代表FWロビーニョ獲得に3000万ポンド以上をポンと支払うなど、それまでチェルシーも2度しか突破したことがない1シーズン1億ポンド投入という壁を、あっさりぶち破ったのだ。
チェルシーがCLを制した2011-12シーズンには、シティも念願のCLに初挑戦していた。さらにはプレミアリーグ優勝を達成。本格的にトップクラスのチームとして、イングランドとヨーロッパをかき回すことになっていった。