■欧州の陸上競技場のピッチに問題がない理由

 ところが海外で使われている陸上競技型のスタジアムを見ると、たとえばベルリンでもローマでも、タッチライン外にもゴールライン外にもゆったりと芝生が広がっている。いくつかの理由があるが、日本の陸上競技場と欧州の陸上競技場ではトラックの「曲走路」の設計が違うことが大きい。

 日本では、ちょうどペナルティースポットから1メートルほどゴールに寄ったところを中心にして、半径37.898メートル(ミリ単位まで決められているところが、陸上競技というスポーツの「お家柄」である)で半円を描くように曲走路がつくられている。直送路の長さは80メートル。曲走路の長さが120メートルになるようになっているのだ。

 ところが、欧州の陸上競技場の曲走路部分は、こうした単純な「半円」ではなく、円弧をいくつか組み合わせた少し複雑な形になっている。その結果、芝面が日本型のものより広く取れるのだ。おまけに、こうした形にすると、ゴール裏からピッチまでの距離が少し近くなるという、サッカーにとっての利点がある。

 こうした根本的なトラックのつくり変えは無理でも、走り幅跳び走路などのレイアウトを変えるだけで芝面を広げることはできる。日本サッカー協会は、日本陸上競技連盟と長年交渉し、なんとか芝面を広げてくれるよう働きかけてきた。だがその交渉は、数十年間を経てもほとんど進展していない。その結果が、ゴールラインのすぐ外に置かれた人工芝だ。だが天然芝だと思って踏み込んだとき、それがただ広げて置かれただけの人工芝だったら、ケガにつながる恐れは十分ある。

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