■陸上型スタジアムのもつ致命的な欠点
陸上競技型のスタジアムでサッカーの試合を行うことには、「観客席からピッチまでの距離が遠く、サッカーの迫力を十分楽しむことができない」という難点のほかに、大きな問題がある。十分なサイズの芝面が取れないことだ。
陸上競技のトラックをもつスタジアムは、当然、陸上競技大会の開催を念頭に置いている。そして陸上競技は0.01秒の記録を争う競技だけに、トラックのつくり方には厳格な規則がある。さらにトラックとフィールドの20もの競技を男女それぞれ次々とこなすために、走り幅跳びや棒高跳び、ハンマー投げや槍投げの走路などを機能的にレイアウトしなければならない。その結果、芝面の広さは、106メートル×70メートルほどになってしまう。
サッカーの公式戦では、タッチラインが105メートル、ゴールラインが68メートルと定められており、Jリーグでもこの規格を全クラブに順守させている。だがこの広さの芝面があればプレーできるかと言えばそうではない。選手たちはプレーをするために片足をラインの外につくことも少なくないし、勢い余ってライン外に出ることも多い。そこで国際サッカー連盟は「ピッチ外に1.5メートル以上の芝面があることが望ましい」としている。
とすると、サッカー場に必要な芝面は、108メートル×71メートルということになる。タッチライン外は1メートルでがまんしてもらう。そしてそれぞれ50センチの余裕しかないゴールライン外は、ゴール内部にトラックと同じ材質の面が出ると格好悪いので、人工芝を敷き、見た目をごまかすことにする——。東京の国立競技場が先鞭をつけ、それに全国の競技場がならうようになって、現在もこの形が「スタンダード」として続けられているのである。