■名古屋の最大の敗因は何だったのか?
ホームの名古屋グランパスの選手からは、そうした明確な“意思”が感じられなかった。普段の通りに(やや慎重に)戦っていただけのように見えた。
名古屋はフラットな4人のDFラインを敷き、両サイドバックが攻撃に上がることもほとんどなかった。中盤を川崎に制圧された結果として攻撃参加が難しかったのだろうが、それ以前に「まずは守ろう」という意思が強かったのだろう。
もっとも、守備こそが名古屋の最大のストロングポイントであり、守備から入ることはけっして間違ってはいない。攻撃が売り物の川崎をゼロで抑えておいて、川崎の選手たちが焦れはじめたところで相馬やマテウス、さらには前田直輝のようなスピードある選手を使ってカウンターを発動してゴールを奪えば、「ウノゼロ」の勝利の方程式を完成させることができる。
名古屋にとっては、ある意味で当然のプランである。
だが、それなら「とにかく絶対に失点をしない」という強い気持ちがなくてはいけなかったのではないだろうか。つまり、立ち上がりは、もっと人数を懸けて分厚く、えげつなく守ってもよかっただろう。
だが、名古屋の守備の仕方は普段と大きな違いはなかった。
「4人のDFラインとボランチの2人(米本拓司と稲垣祥)で普通に守っていれば、たとえ川崎といえども無失点で抑えられる」
そのくらいの気持ちだったのではないか。たしかに、これまでの12試合で失点がわずかに3と結果を出していたのだから、彼らは守備には自信を持っていたのだろう。
だが、インテンシティの高い川崎の攻撃の圧力は、名古屋の選手たちが想像していたものをはるかに超えるほど強力だった。
この試合、試合前に名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督が喉の痛みを訴え、検査の結果が確定しなかったことでベンチに入れなかった(同監督は、その後、陽性が確認された)。しかし、ゲームの入り方の部分が敗因につながったのだから、勝敗を分けた原因は監督不在ではない。川崎があれほどインテンシティの高い攻撃を仕掛けてくることを想定していなかったことが最大の敗因だった。