■欧州のクラブはオリンピックに選手を出し渋る

 だが、結果はどうだったか——。フィリップ・トルシエ監督率いる若いチームはグループリーグを無敗(2勝1分け)で乗り切ってグループ首位を確保し、岡田武史監督が導いたチームはカメルーンとデンマークを撃破し、西野朗監督が信じた選手たちはコロンビアを下してグループを乗り切ったではないか。

 もちろん、その間には、1998年、2006年、2014年と、世界の予想どおりグループステージで「撃沈」したこともあった。しかし「常に死の組」でありながら、しかもどの相手も最高のモチベーションと準備で挑んでくるワールドカップにあって、日本は1試合1試合、いや1プレー1プレーを死に物狂いで戦い、結果として2大会に1回の割合でグループステージ突破を果たしているのである。

 オリンピックでは、どの国も準備に苦労する。欧州のクラブにとっては、新シーズンに向けての準備が佳境になったり、国によっては国内リーグがスタートしている時期の大会。そんな大事な時期に、レギュラークラスの選手が欠けてほしくはない。ましてオリンピックで短期間に6試合も戦って疲れ切った選手では、フィジカル面ではどのチームも理想の状態にある(はずの)国内リーグの序盤戦で使うことはできない。

 さらに今回のオリンピックには、無視できない要素がある。1年間の延期によって「U−24の大会」になったという点である。欧州のサッカーでは、23歳以下でも中心選手として活躍している例がたくさんあるが、24歳になればもう「若手」ではなく、完全に「中堅」選手である。それだけに、クラブがさらに強く出し渋る恐れは十分ある。欧州のチーム、欧州でプレーしている選手を数多く抱えるチーム、さらには「欧州組」がチームの核になるチームは、最後の最後までチーム編成に苦労する恐れがあるのだ。

 もちろん、それは日本にとってもまったく同じだ。スペインでプレーする久保建英ヘタフェ)、イタリアで「守備のタレント」として大きな注目を集めている冨安健洋(ボローニャ)、ドイツのブンデスリーガで「月刊最優秀新人」に選ばれた堂安律らだけでなく、オランダで堂々たるプレーを見せている板倉滉(フローニンゲン)、中山雄太(ズヴォレ)、菅原由勢(アルクマール)など、レギュラークラスの選手を放出してもらえないことも想定しておかなければならない。

 すなわち、オリンピックのサッカーは「フタを開けてみないとわからない」大会なのだ。「ビッグネーム」の国が活気のないサッカーであっさりと負けたり、中米の小さな国のチームが思いがけない力を見せたり……。これまでの大会では、金メダルにからむのは、結局のところ欧州や南米の「ビッグネーム」であることが多かったが、そこに至る過程では、世界のファンがびっくりするような結果がたえず生まれてきた。

※第2回に続く

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