■日本はまだ優勝候補になったことがない
「死の組」という言葉を最初に使ったのは、1970年ワールドカップのとき、開催地元のメキシコの記者たちだったらしい。前回(1966年大会)チャンピオンのイングランドと、王座奪還を目指すブラジルと、1962年ワールドカップ準優勝のチェコスロバキアが同組になり、そこにもうひとつ欧州のチーム、ルーマニアが同組になったことで、「Grupo de la muerte(Group of death)」と表現した。以後、いろいろな大会で使われるようになった。
このように、中立の立場で中立国のファンに向かって「この組は大変です」と解説するのは、いいだろう。まあ、メディアというのは「中立」を旨としているが、そのメッセージは期待を煽るためのものであったり、「期待してはいけないよ」というものであったり、何らかの「非中立性」を含んでいることは否定できない。
あるいはまたブラジルやドイツ、スペイン、アルゼンチンといった自他ともに優勝候補と認めるチーム、すなわち、グループステージは問題なく勝ち進めるだろうから、重要なのは準々決勝からだと考えているようなチームが、「少し面倒な組だな」としかめっ面をするのも理解できる。ところが日本は、ワールドカップやオリンピックでいまだかつてそのような立場になったことはない。
ということは、日本にとって、世界大会は常に「死の組」なのである。グループ突破を果たした3回のワールドカップを振り返ってみればいい。2002年大会で、ベルギー、ロシア、チュニジアと組み合わされたとき、欧州から2チームが含まれていることで「これは大変だ」と思わなかった人がいただろうか。2010年大会では、カメルーン、オランダ、デンマークと同組になった。この3チームから日本が勝ち点1でも取れると考えた人が、日本を含め、世界にどれだけいただろう。
そして2018年大会では、コロンビア、セネガル、ポーランドと同組になった。ハメス・ロドリゲス、サディオ・マネ、そしてロベルト・レバンドフスキーといった「ビッグネーム」に恐怖を感じなかった日本のファンがいただろうか。