知人の自称サッカーマンは、山歩きのときに45分歩くと15分の休憩をとり、自転車乗りでは90分走ると15分休みたがる。しかし、その通りになったことはまずない。サッカーを離れると、時間の区切りとしてはどこか不自然なのだ。なぜ、サッカーの試合時間は90分間なのだろう。今回は、その不思議に迫る――。
■なぜ100分ではないのか
サッカーの試合時間はなぜ90分(45分ハーフ)なのだろうか――。
昔、東京に住むイギリス人のチームと試合をしたとき、「35分ハーフでやろう」と言ったら、激怒されたことがある。「サッカーは45分に決まっているだろう」というのだ。グラウンドの貸し出し時間が2時間しかなく、ラインを引いたり、軽くウォーミングアップする時間を入れると、どうしても70分のゲームしかできないんだと言っても聞き入れてもらえないのには閉口した。
そんな草サッカーの事情は別にしても、「90分」というのは不思議な時間である。100分(50分ハーフ)なら、現在日本サッカー協会やJリーグが標準としている「通算試合時間表記(「後半30分」ではなく「75分」という表記)」で困らなくても済む。もう半世紀近くサッカーを取材するという仕事をしていても、正直に告白するが、まだ私は45を足したり引いたりする計算が苦痛でならない。
なにしろ、後半が始まるときには、前半キックオフのときと同様、「00分00秒」という表示のストップウォッチを押すしかないのである。その時計が示すのは、「スタートしてから○○分」という時間だけで、もし「通算時間表記」にするなら、45分を足さなければならない。何十年やっていても、これが慣れない。50分ハーフなら、50分を足せばいい。こちらは計算というより、半ば「直観的」にできる。スティーブ・ジョブズなら、間違いなくサッカーを100分間のゲームにしていただろう。