■苦しい時間を結束力と采配で乗り切る

 後半半ばに差し掛かろうとする60分に、リバプールのユルゲン・クロップ監督は中盤の底にチアゴ・アルカンタラを投入。ディオゴ・ジョタが左ウィングに入った代わりに、3トップからはフィルミーノがトップ下に降りた。R・マドリードの守備ブロックの周りで横に回るばかりのボールを、縦に動かしたい意図がうかがえた。

 確かに、反撃のかじ取りを託されたチアゴは、縦パス、さらに斜めのパスからの速い展開を狙ってボールを送り込んだ。だが、その展開もR・マドリードにとっては想定内のようだった。焦りを見せることなく全員がパスコースを消し続け、足を止めなかった。カゼミーロが最終ラインの前で防波堤となり、守備にも献身するモドリッチがミドルパスで仲間に時間を与えようとし続けた。

 さらに、ジネディーヌ・ジダン監督の選手交代が効いた。

 70分にスピードで振り切られてシュートに持ち込まれた右サイドバックのポジションには、本職のアルバロ・オドリオソラを投入。その位置から中盤中央へ移動したフェデリコ・バルベルデは、本来の働き場所でボールの回収に精を出した。リバプールがさらに前線への選手配置を増やした82分には、イスコがピッチへ。1点入れば一気に流れが変わりかねない状況で、イスコのキープ力はチームメイトたちに息を吹き返させた。

 初戦で得た3-1というアドバンテージを手放すことなく、最終的に優勝した2017-18シーズン以来となる準決勝進出を決めた。途中でアレンジを加えつつシナリオを描き上げ、それを遂行してみせた選手たちにジダン監督が賛辞を贈る。

「選手たちの持ち味を、非常に誇らしく思う。壁を背負った時、物事がうまくいかない時に、彼らは結束力を見せてくれる。我々には大きな質が伴っているが、この選手たちの一番気に入っている点は、彼らの気質なんだ」。

 一時は4位に後退したラ・リーガでも、先週末には宿敵バルセロナを下して首位アトレチコ・マドリードに勝ち点1差ににじり寄った。その伝統の一戦を挟んでのリバプールとのCL2試合という、ハードな1週間を乗り切った。「シーズン終盤に向けて、本当に後押しになる」とジダン監督。

 世界屈指の名門が、底力を示そうとしている。

■結果

リバプール 0-0 レアル・マドリード

(2戦合計 1-3)

  1. 1
  2. 2
  3. 3