■FWスタメンは岩渕と菅澤が盤石

 パナマ戦ではFWの菅澤優衣香がハットリックを達成した。そのゴールも素晴らしかったが、前線でしっかりとボールを収めて日本の攻撃の軸となってプレーできていた点は評価したい。

 男子の代表でも前線でボールを収めることのできるFWが大迫勇也以外にいないことが問題になっているが、女子の場合もターゲットとして使える強さのあるFWがいないのが実情だ。永里優季(レーシング・ルイビルFC)が使えれば問題ないのだろうが、どうやら本人も高倉麻子監督も“その気”はなさそう。今回のパラグアイ戦、パナマ戦でも菅澤が2試合とも先発で起用されており、トップのポジションは菅澤で決まりのようだ。

 その菅澤が、これまで以上にトップでしっかりと頑張って、攻撃の組み立ての中心として活躍できたことは今回の2試合を通じて最大の収穫だったのかもしれない。

 もちろん、対戦相手は格下だったわけで、強豪国相手に菅澤が通用する保証はどこにもないのだが、それでも明るい兆しではある。

 とくに、パナマの場合、チーム力としては相当に落ちるチームだったが、センターバックのジェミラ・ピンソンとイラリー・ハエンの2人は身体能力も高く、また非常に厳しいマークをしてきた。キックオフ直後は、この2人のCBが体を付けてマークしてきたので、日本のくさびのパスが通っても前線の選手がつぶされて、なかなかチャンスが作れないほどだった。そして、後半に入るとパナマはセンターバックを1人増やしてきたが、CBの中央に入ったジェレニス・デレオンは181センチの大型DFだった。

 そうした、フィジカル的に強い相手に対して、菅澤はしっかりとボールを収めて優位に立ち、そして自らも3ゴールを決めた。相手がどうであれ、これは自信につながることだろう。

 日本のFWはその菅澤と高倉監督就任以来、ずっと攻撃の中心を担っていた岩渕真奈が2試合とも先発しており、7月の東京オリンピックでもこの2人が中心となることは間違いない。

 ただし、パラグアイ戦では66分に菅澤と岩渕が退くと、それ以降、アディショナルタイムまでゴールが決まらなくなってしまったし、パナマ戦でも59分に菅澤と岩渕が退くと、交代で登場した杉田妃和が61分に7点目を決めて以降は、日本に得点は生まれなくなってしまった。菅澤と岩渕を欠くと日本の攻撃のクオリティーは明らかに下がってしまうので、これも課題となるだろう。猛暑の中の連戦となるオリンピックで、全試合にこの2人がフル出場できないのは当然だからだ。

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