■最後尾からの統率

 浮島敏監督は「良い攻撃のための良い守備」「良い守備のための良い攻撃」ということを度々口にしている。この言葉は特に前線の選手の守備を指すことが多いが、最後方の谷もそのことを強く心掛けている選手だ。谷はこの代表ウィークでU24日本代表に招集されていたが、合宿中に自身のストロングポイントを「色々な予測をして、広い範囲を守ること」と評していた。

 このマリノス戦の前半、ボールをキャッチした谷はすぐにパスを出そうとしたが、その相手がポジションについていないことを見るやいなや、「準備しとけよー」と、ちゃんと準備をしておくよう言葉で促した。自身が色々な予測、準備を怠らないだけでなく、周りの選手に対してもその部分をどんどん要求する谷の存在が、攻守が一連の流れとして続いていくサッカーの実現のために重要なものになっていることを感じさせられる場面だった。

 また、それはU24代表として北九州でアルゼンチン相手に完封勝利を収めた試合後、初出場だったことに対して「最後尾からしっかり声をかけて統率すれば全然できると思っていた」と語っていたことも思い出させた。

 湘南で試合に出ていることが代表活動での自信となり、代表での経験が湘南の主力としての責任感というものを強くさせている、という代表とクラブでの理想的な好循環がそこにはあった。

 五輪が1年延期になったことで、一気に大迫敬介を脅かす存在になった谷。湘南に勝ち点をもたらし、6月には再び代表のユニフォームに袖を通すことになるだろう。心身ともにどんどん成長しているその姿から目が離せない。


■試合結果

横浜F・マリノス 1―1 湘南ベルマーレ


■得点

65分 エウベル(横浜F・マリノス)
75分 山田直輝(湘南ベルマーレ)

PHOTO GALLERY 横浜FM対湘南の試合での谷晃生
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