■コラーの体格とアグエロのアジリティ

 一方、ハーランドは典型的な「9番」タイプの選手だ。だが彼はゴール前に留まっているのみのプレーヤーではない。ピッチを走り回り、積極的にボールを受けて起点になる。ヤン・コラーのような体格と、セルヒオ・アグエロのようなアジリティを備えている。

 大きなストライドでスペースに走る。コンパスのように回転しながら、長い足とリーチでボールをキープする。相手のセンターバックとボランチを釣り出して、マルコ・ロイスやジェイドン・サンチョと連携しながらバイタルエリアを攻略する。

 ハーランドが一躍時の人となったのは2019-20シーズンだ。ザルツブルクの選手として臨んだチャンピオンズリーグで爆発した。グループステージ6試合で8得点。そのシーズンの前半戦で公式戦16得点6アシストを記録した。

 少し前に遡れば、2019年5月にU-20のワールドカップで大暴れしていた。ノルウェーがホンジュラスに12-0で圧勝した試合で、ハーランドは9得点をマーク。「怪物感」をすでに漂わせていた。

 そのハーランドを賛辞を送る者は少なくない。「まるで動物だ」とアントニオ・カッサーノが語れば、「数年以内にビッグクラブに移籍する。その移籍金は2億ユーロ(約240億円)あるいは3億ユーロ(約360億円)になるだろう。いま最もフィジカルの強い選手だ」とクリスティアン・ヴィエリが述べる。「ウサイン・ボルトのように走る。弾丸のようだ」と話すのはディミトリ・ベルバトフだ。

 ムバッペとハーランド。彼らは未来であり、現在だ。では、なぜ彼らが出現したのか。問題を紐解くためには、背景とその他の才能を見つめる必要がある。

(後編に続く)

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