彼らは次代を担う存在になるのだろうか?
フットボールの世界では、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドの2選手が長くトップに君臨してきた。2008年以降のバロンドール(2010年から2015年はFIFAバロンドール)の受賞回数を見ると、メッシ(6回)、C・ロナウド(5回)とそれは明らかである。
だが2018年にルカ・モドリッチがバロンドールを獲り、風向きが変わった。彼もまたベテランの域に達しているが、そういうことではない。メッシとC・ロナウド以外にも、バロンドールを獲得し得るのだという当たり前の事実が、いまいちど大衆に認識されたのだ。
そして、今、ネクスト・ジェネレーションを予感させる選手たちが出てきている。メッシ(33歳)とC・ロナウド(36歳)の年齢を顧みても、タイミングに運命的なものを感じる。
キリアン・ムバッペとアーリング・ハーランド。彼らが、次の時代を牛耳るであろう2選手だ。
■ゴールの重要性
フットボールにおいて、重要なのはゴールだ。得点はスタイルではない。倫理でも、体格でもない。ただ、逆説的にムバッペとハーランドはその点で申し分ない能力を備えており、共通項がある。
また興味深いのは、利き足だ。左利きのメッシと右利きのC・ロナウドが覇権を争ったように、右利きのムバッペと左利きのハーランドがトップに君臨しようとしている。
しかしながら両者のプレースタイルは大きく異なる。
まずはムバッペだ。2018年のロシア・ワールドカップでは、決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦で圧倒的なスピードで相手守備陣を切り裂き得点を演出。世界の度肝を抜いた。1998年のワールドカップーー奇しくも20年越しにーーでマイケル・オーウェンが見せたようなプレーだった。そして偶然にも、いずれも相手はアルゼンチンだった。さらに言えば、あのムバッペの圧巻のプレーはメッシの眼前で行われた。
ただ、ムバッペの特徴はスピードだけではない。センターフォワード、右ウィング、左ウィング、トップ下、前線のポジションであればどこでもこなせる器用さを持ち合わせる。それでいて、柔らかいタッチでスモールスペースで違いをつくれる。ストライカーとしても、ウィンガーとしても、仕事ができる。ゆえにネイマールともアントワーヌ・グリーズマンとも共存できるのだ。
「ムバッペは私の後継者になれる。それはジョ-クではない」とはペレの言葉だ。
「ムバッペはトップスピードで技術を発揮できる。そこは(現役時代の)私に似ている。また、判断が早く、ボールが来る前に次にどういうプレーをするべきかを決めている。最善の解決策を模索して、どこに向かうべきかを頭の中に描いているんだ。それは現代フットボールで重要な要素だ」