3月25日に行われる日本対韓国の親善試合。日本にとって特別な思い入れのある韓国との一戦は、多くの注目と期待を集めている。サッカージャーナリストの大住良之氏と後藤健生氏の2人が、実に54年間にわたる日韓戦観戦の蓄積から、多彩な角度の議論を戦わせる!
■「その場より、メディアでの余波がすごかったなぁ」
―93年に、ワールドカップ予選では35年ぶりに韓国に勝利したことで、意識としては、ここで韓国と並んだのでしょうか?
大住「それはならない」
後藤「いや、僕はそうなったと勘違いしちゃったね」
―後藤さんは並んだと?
後藤「それは間違いだったんだけどね。つい、これで日本が上回ったから次も勝てるかな、なんて思っちゃった。勘違い」
大住「それを思い知らされたのは97年?」
後藤「あれは、まあ負けちゃったな、というか。85年に負けた時のような、どうしようもない感じはしなかったね。試合運びに失敗して負けちゃったって感じ」
―97年のワールドカップ予選ですね?
(※1997年9月28日、国立競技場でのフランスW杯最終予選で日本は1対2で韓国に敗北)
後藤「そう、加茂周監督の時のね。せっかくリードしていたのを、ふいにしちゃって」
大住「その流れが、取り返しのつかない時間に来るからね」
後藤「もうちょっと上手く立ち回れれば、1対0で勝てたのになって。そういう残念さはあったけど、コテンパンにやられた感はなかったかな」
―国立でご覧になっていて、その予選の負けた時は大きなショックはなかったんですか?
後藤「そんなことはない。ホーム&アウェイのリーグ戦をやっているんだから、そりゃいろいろとあるだろうって」
大住「あの時は国民的な関心がすごくて、その余波のほうがすごかったよね」
後藤「そう、集団ヒステリーのような感じ。なんかもう、すぐに『絶望』とか書かれてさ」
大住「今でもよく覚えているのが、スポーツ紙が『自力なし』って書くんだよね。当たり前じゃん。サッカーのリーグ戦に自力なんてないよ。それで絶望とかさ。絶望っていう言葉もずいぶん出たよね?」
後藤「何回、絶望すりゃいいんだって思ったよね」
大住「いや、まだ試合あるじゃんって」
後藤「そしたら次もまた、絶望ってね。このあいだも絶望しているんだから、もういいじゃんって思った」