■2003年に見たACミランの劇的勝利

 さて、1980年に初めて訪れた「サンシーロ」。1990年のイタリア・ワールドカップの時は、グループリーグの間はミラノのホテルに泊まっていたので何度もこのスタジアムで観戦した。アルゼンチンがカメルーンに敗れた衝撃の開幕戦やイビチャ・オシム監督のユーゴスラビア代表がバルデラマらのコロンビアを破った試合も見た。

 そして、1990年代末頃からは、スカパー!でセリエA中継の解説の仕事をするようになり、当時は毎年のように現地解説の仕事もあったのでミラノを訪れる機会が増えた。他の都市での試合の解説で行った場合でも日本との往復にはミラノのマルペンサ空港を利用することが多かったので、イタリアに行く度に「サンシーロ」で観戦することになったのだ。おそらく、海外のスタジアムの中で観戦した回数が最も多いのはこのスタジアムだろう。

 思い出深いのは2003年4月のチャンピオンズリーグ準々決勝のミラン対アヤックス戦だ。ファーストレグはスコアレスドローに終わった後のセカンドレグ。ミランが2度先制するが、アヤックスが2度とも追い付き、2対2のまま90分を過ぎた。このままでは、アウェーゴール・ルールでアヤックスが勝ち抜けることになる。アヤックスのサポーター席は、“勝利”を確信して盛り上がっていた。ところが、91分、左からパオロ・マルディーニが放り込んだボールをマッシモ・アンブロジーニ、フィリッポ・インザーギがつないで、最後はヤン=ダール・トマソンが蹴り込んでミランが劇的な勝利を収めたのだ。

 この試合が思い出深いというのには別の理由もあって、実はこの試合、取材申請をしていなかったのでスタジアム前の広場でチケットを買って入場したのだ。よく確かめもせずにいい加減なチケットを買ったら、これがなんとゴール裏の過激なティフォージたちの真ん中の席。「これでは試合なんか見ていられない」と思って、バックスタンド中央の最高の位置まで歩いて行って、空いていた席に勝手に座って見ていたのだ。

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