■勝つための一押し
しかし、開始早々の失点は重くのしかかった。攻撃に出る場面で、サカとキーラン・ティアニーの左サイドがストロングポイントになるアーセナルだが、サカとカンセロが消し合う状態からのスタートになるために、サカにボールが渡ってもパスコースは限られていた。
サカからは、ティアニーに預ける、という選択肢しかなくなってしまい、シティはそこをケアすれば大きな心配はなかった。
相手を機能不全にする、ということをクリアしても、自分たちが勝てるかは別だ。負けない、という結果は得やすくなるが、勝てるかどうかは他にかかっている。
ペップ・グアルディオラ監督からすれば、リードを奪っている状態であれば、カンセロの部分を対応されても問題なかった。それによってサカが消え、ティアニーの対応も容易になる。相手の攻撃でもっとも良い部分を消せば、負けない可能性は高くなる。勝てるかどうかは別だが、リードがある。別にそのままでも構わなかった。
結局、アルテタ監督は、グアルディオラ監督を焦らせる策は講じられないまま試合を終えた。
予め準備しておいたカンセロの対応だけでなく、先制点を奪われた攻撃に対する素早い修正も、ビルドアップでシティのプレスに負けない姿も見せたが、負けない、までのものだった。勝つためのあと一押しは最後まで出てこなかった。