■セカンド・インパクトは致死率50%

「セカンドインパクト」という言葉がある。脳震盪を起こした者が短時間(数日から数週間以内)にもういちど頭部に衝撃を受けると、致死率50%という危険な状態になってしまうという。脳震盪を起こした選手がそのままプレーを続ければ、もういちど頭を強打する恐れがある。脳震盪はそれほど恐ろしい傷害なのだ。

 さらには、時間をおいてでも、脳震盪を繰り返していると、認知症になりやすいという報告もある。ヘディングによるインパクトも含め、サッカーという競技のなかでいかに脳の傷害をなくすかというのは、現在のサッカーの喫緊の課題である。

 日本サッカー協会は10年前から脳震盪の危険性を警告し、脳震盪を起こしたプレーヤーがどのようなステップを踏めば競技に復帰できるか、ガイドラインを示してきた。

 2018年に当時柏レイソルに所属していたGKの中村航輔選手を襲った出来事は記憶に新しい。当時23歳、ロシアで行われるワールドカップの有力な候補と言われていた中村選手だったが、Jリーグがワールドカップによる中断にはいる直前、5月20日の名古屋グランパス戦で空中戦の競り合いから落ちたときに頭を強打、そのままタンカで運び出され、脳震盪および頸椎捻挫と診断された。

 幸い、経過はよく、チームドクターの管理の下、しっかりと日本サッカー協会の指針に沿って復帰のステップを踏んだ結果、5月31日に発表されたワールドカップ・メンバーにも名を連ねた。試合出場はならなかったが、ワールドカップ後の有力な第一GK候補として日本代表の活動を継続した。しかし帰国後、再開されたJリーグの初戦で、またもアクシデントに見舞われる。7月18日のFC東京戦、クロスを防ごうとしたプレーで相手選手と激突、その夜に脳震盪と診断されたのだ。

 最初の受傷からわずか2カ月後の「セカンドインパクト」。幸い、大事には至らなかったが、復帰には慎重にならざるをえず、試合への復帰は11月まで待たなければならなかった。しかしこうした慎重な復帰プログラムによって、中村選手はその後も安心してプレーできるようになったのだ。

※第2回につづく

PHOTO GALLERY 【図表】サッカーにおける脳振盪に対する指針(JFAのHPより)
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