後藤健生の「蹴球放浪記」連載第44回「静まり返った不気味な車内」の巻の画像
チャカリタの昇格決定戦の入場券 提供:後藤健生
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ゾンビ列車の映画を見たことがある。列車に乗り込んだら、乗客はすべてゾンビ。だから、絶対に人間だとばれてはならない。――世界をまたにかけるサッカー観戦者は、それとも似たとても怖い経験をしていた!

■あのボカよりももっと怖い!

 クラブにとって、優勝が懸かる試合というのはとても大事な試合です。しかし、クラブ関係者やサポーターにとってはお祭り的な優勝争いよりも、残留争いや昇格争いの方が熱くなるのかもしれません。

 1999年の7月、僕はアルゼンチンでそんな試合に遭遇しました。

 1999年の夏、フィリップ・トルシエ監督が率いる日本代表が招待されて、パラグアイで開催された南米選手権「コパ・アメリカ」大会に出場しました。しかし、当時の日本代表はアウェーの環境で南米の代表チームと互角に戦うことはまだ不可能で、結局1分2敗の成績で敗退してしまいます。

 決勝戦ではブラジルがウルグアイを3対0で破って優勝を決めました。カフーとロベルト・カルロスの両サイドバックにリバウドやロナウドといった攻撃陣がそろっていました。

 決勝戦の後、僕は陸路でアルゼンチン国境に向かいました。そして、国境を越えたミシオネス州の州都ポサダスでボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)対オリンピア(パラグアイ)のプレシーズンマッチを観戦してから、空路でブエノスアイレスに移動しました。

「ミシオネス」とは「宣教」といった意味で、ヨーロッパの宣教師が南米大陸にキリスト教を布教するために、この地に多くの修道院を建設したことから名づけられた地名です。実際、今でも多くの修道院の遺跡が残っていて世界遺産にも登録されています。

 そうそう、ロバート・デニーロ主演の「ミッション」という映画もありましたよね。英語の「ミッション」がスペイン語の「ミシオン」、その複数形が「ミシオネス」です。

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