■混乱の要因は”旗”
VARが導入されていることで、選手はファウルやオフサイドらしき事態があったとしても、主審の笛で試合が止まるかボールがピッチの外に出てプレーが途切れるまでは、そのまま動き続けなければならない。これはもはや当たり前のことになっている。また、際どいオフサイド判定の場合に副審はアウトオブプレーまで旗を上げない(オフサイドディレイ)ことも、当たり前のものとして選手も認知している。
WBAの混乱は、オフサイドが発生した瞬間でも、プレーが途切れたタイミングでもなく旗が上がったことで起こった。
実は、旗が遅れて上がるタイミングとして、チャンスが失われたら、というケースもある。しかし、どこまでがチャンスなのか、という判定は難しく、最初の瞬間に上がらなければ今回のように攻撃の流れが続いている場合には通常上がらない。そこで上がったことでWBAの選手が気を取られてしまった。主審の笛が鳴っていない、とプレーを最後まで続けたシティが一枚上手だった。
残留争いの真っ只中で、なんとしてでも勝ち点が欲しいWBAは、窮地を救うオフサイドの笛を求める気持ちを優先させてしまった。同情の余地は存分にあるが、首位のマンチェスター・ユナイテッドを猛追するシティの勝利に対する意識とは、あまりに違っていた。その瞬間に差が生まれた。
ただでさえ、2点差になったらどうしようもないWBAは、誤審ともいえないが、集中の邪魔をされた、というハプニングもあって、0-5で試合を終えた。
VARの時代になった現在のサッカーだが、選手もファンもその浸透度が増すごとに、モヤモヤしている。誤審での不利益は確かに減ったが、感情のぶつけどころがなくなり、皮肉にも気持ちの整理がつきにくくなることが増えた。グレーゾーンを恋しがる声が大きくなってきている今、選手ファーストの、より良い形での運用が求められている
■試合結果
ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン 0―5 マンチェスター・シティ
■得点
6分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)
20分 ジョアン・カンセロ(マンチェスター・シティ)
30分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)
47分 リヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)
57分 ラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)