■普段やらないことをやろうとした理由
本来は、久保がアレニャに落としてから2人で一気に右サイドを攻略するつもりだったのだろう。結果的に久保へのボールは高さが合わず、ヘディングで後ろにそらすだけの形になってしまったが、深い位置までボールが流れたことと、アレニャが同じ右サイドにいてボールを追えたことでビルバオの窮屈なクリアに繋がり、最終的には本来のプランと同じ形でゴールが手に入った。
本来のプラン、つまり、ホセ・ボルダラス監督は奇襲を用意してきたわけだ。
では、なぜ普段やらないことをこの試合でやろうとしたのか。それは、1-5という試合結果が物語っている。マタのPK失敗もあったが、その成否に関わらず、ヘタフェはチーム全体で完敗していた。ただでさえ脆弱なヘタフェの最終ラインは、サイドで溜めを作って中で勝負してくるビルバオと相性が最悪だった。
1-1になったビルバオの同点ゴールを見れば一目瞭然。簡単にペナルティエリア内で相手をフリーにしてしまう今のヘタフェでは、どうやってもビルバオに勝てないことがわかる。
しかもこの最終ラインはビルドアップに難があるので、マークされている久保やアレニャにボールを届けることができない。こうなると、ボールを受けるには低い位置でプレーするか、マークを受けないようなポジショニングをするしかないが、通常のビルドアップでさえ難があるのだからイレギュラーなポジショニングにパスを出せるクオリティは当然ない。相手にとって怖くない位置でボールを受けさせてもらうしかなくなり、そこで余裕たっぷりのディフェンスを2人3人と相手しなければならない。
攻守共にビルバオの前では無力で、だからこそ奇襲が必要だった。終わってみれば、一矢報いる、の順序を逆にして最初にやっただけになってしまったが、勝ち点を取る可能性を僅かでも残すために、そうするしかなかった。