乾貴士と武藤嘉紀が先発したエイバルは、ほぼ完璧な試合運びを見せていた。
3バックを採用するアトレティコ・マドリードに3トップをあてたエイバルは、攻撃時には左の乾と右の武藤が大きく開き、ウィングバックの奥を狙った。9分には早くも効果が出て、ロングボールで抜け出した武藤が後ろから追いかける形になったウィングバックのヤニック・カラスコに足を踏まれて倒されPKを獲得した。キッカーはゴールキーパーのマルコ・ドミトロヴィッチが務め、冷静に決めて先制した。
守備では、アトレティコのビルドアップに対して4-3-3の3ラインを前後20から30メートルという非常にコンパクトな状態で並べた。最終ラインも高く、ルイス・スアレスに広大なスペースを与えることになるが、狭い中で数的有利を作り続け、質の高いパスを出させなかった。
アトレティコはコケとキーラン・トリッピアーが出場停止、マリオ・エルモソが負傷欠場、とビルドアップで中心となれる選手が軒並み不在だったこともあり、エイバルの守備の前に何もできずに前半を終えようとしていた。
ところが、そのまま前半が終わるかに思えた40分、こぼれ球が最終ラインに加わっていたボランチのセルヒオ・アルバレスのもとに飛んだ。アルバレスはこれまでチームがひたすら繰り返してきたように前線へロングボールを蹴ろうとしたが、より精確に届けようとして一旦蹴るのをやめた。そこを見逃さなかったのがマルコス・ジョレンテだ。キックをやめた瞬間に方向を変え、精確さを求めてしっかりボールを見て大きなキックモーションに入ったアルバレスとの間を詰めると、蹴られたボールをブロックすることに成功した。
ボールはペナルティエリアに転がり、それにいち早く反応したスアレスが一気にシュートを放ってゴールを決めた。
チーム全体の攻撃は、エイバルの守備と自分たちの欠場者によって機能しなくなっていたアトレティコだが、高い集中力で絶えずベストを尽くす、というディエゴ・シメオネ監督のチームらしい同点劇だった。