■進化した川崎フロンターレの戦術
立ち上がりは、その戦略がうまくはまっていた。
5分には宇佐美のドリブルでファウルを誘ってFKを獲得。宇佐美が入れたボールをパトリックが頭で合わせてネットを揺らすことに成功した。オフサイドでゴールは認められなかったものの、攻撃の主役である2人に“可能性”は感じられた。
そして、10分にはハーフラインから少し自陣に入った高い位置で最終ラインの三浦弦太が川崎のパスをカットし、そこから前線までパスもつながるチャンスもあった。これも「高い位置でインターセプトしてカウンターを発動」という戦略の通りだった。
一昨年くらいまでの川崎だったら、これでかなり手こずることになっていただろう。
川崎といえば「細かいパスを回して相手守備陣を崩す」というイメージが定着している。そのパスを分断されてしまっては攻め手が封じられてしまうし、カウンターでピンチを招くことも多くなってしまう。
だが、今シーズンの川崎は進化している。持ち前のパス攻撃に加えて実に効率的にロングボールを使うことができるのだ。そして、三笘薫の破壊的な(すなわち、ゴールに向かっての)ドリブルという新しい武器も加わっている。
G大阪が屈辱的な5失点を喫したゲームでも、1点目(レアンドロ・ダミアン)は左の登里享平のクロスから、2点目(家長昭博)は右CKから、3点目と4点目(ともに家長)は三笘薫のドリブルから、そして5点目(齋藤学)は右サイドのロングボールからと、いわゆる川崎らしいショートパスによるゴールは一つもなかった。